幾日か、そんな楽しい時間のあるリサの小屋で、家出してきた事を忘れたかのように沙羅は楽しく過ごしていました。
そんなある日、玄関のドアをドンドンと叩く音がしたので、開けてみると、いかめしい顔の男が立っていました。
よく見ると、その男の後ろにも何人かいるようでした。
慌ててリサが玄関まで行くと、少し困ったような顔をして話しかけました。
「これは、ヘイデルさん、何のご用でしょう。家賃を納める日にはまだ早いと思いますけど」
ヘイデルという男はこの辺りの土地を持っている地主で、リサにこの小屋を貸しているのでした。
そして、早くリサにここを出て行ってもらいたいのでした。
「ほほう、どこの子だい、あんたのところに客が来ているとは珍しい」
そう言うと、言葉を続けました。
「来月からまた家賃を上げる事にしたからな。だから、もっと安い家に引っ越したほうがいいぞ」
リサは驚くような顔もせずに、聞きました。
「なんで急に家賃を上げるのですか?」
そんなリサの言葉も何も通用しないように、じぬしヘイデルは言い放ちました。
「うるさい、ここはわしの土地だ。どうしようがわしの自由だから名。いやなら早く出て行くこった」
沙羅は、リサと地主のやりとりを見ていて、地主に腹が立ったのと、自分の家出した原因を思い出しました。
押さなくして、母を失っていた沙羅は、父リチャードと一緒に母の故郷である東洋で二人暮らしをしていたのですが、そんなある時、沙羅の事も考えて父が再婚をしました。
再婚の相手にも沙羅と二つほど年の違う女の子がいましたので、沙羅のいいお姉さんになってくれるとも思ったのです。
家族が増えたために、今度は、父の故郷のほうの大きな屋敷に引っ越す事になったのです。
しかし、父が、仕事の都合で、家に帰る事が少なくなると、とたんに、母と姉のいじわるが始まりました。
非道いしうちを受けていた沙羅は、半ば、追い出されるような形で、家を抜け出したのでした。
そんなことを思い出していた沙羅は、、数人の男達の悲鳴ではっとしました。
「熊だぁー」
そう叫ぶと、男達は慌てて小屋から離れて逃げ出していきました。
地主も、わしを置いていくなと顔を青ざめさせて男達を追いかけていきました。
「マー君だわ」
リサがぽつりと
呟
きました。
沙羅は、マー君ってと思いながら外を見ると、日の光でそう見えたのか、銀色に光る毛皮を持つ熊がのそりのそりと森のほうへ入っていくのを見ました。
このことがあってからしばらく自分の事をリサに放す機会を失っていました。
気になっているのですが、マー君の事も何故かあまりリサに聞く気が起きませんでした。
地主の事やアーネスト、そして、熊のマー君の事、そしてもちろん自分の事などで、頭を整理しきれませんでした。
しかし、そんなある日、勇気を出して自分の家出の理由をリサに打ち明けました。
リサは「そう」とだけ言うと更に詳しく聞くでもなく、いつものようにほほえんでいました。
そして、森の事を話し始めました。
「私はここを離れたくないの、離れてはいけない気がしているの」
そう話し始めると、森に愛情を持っているのだと沙羅は思いました。
熊のマー君の事も放してくれました。
何でも、困ったときにいつも助けてくれるのだそうです。
食料が無くなって、それを買うお金もない時に、マー君が持っていた果物なんかを落としていったり、狼がやってきたときもしばらくしてマー君がひょっこりと現れて狼をおっぱらってくれたこともあるとのことでした。
更に、実は、この小屋の近くにある森の奥にはタカラ物があるのだとも話してくれました。
その話をしていると、いつの間にかドアが開いていて、地主と鉄砲を持った男が二人立っており、こちらの話を盗み聞きしていました。
「熊退治に来ていい話を聞かせてもらったよ。宝があるのか」
そういうと、リサを追い出す事をそっちのけて、ぢぬしたちは、宝を探そうと出て行きました。
沙羅はアーネストがいないことに気づきました。
「目が見えないのに、どこにいったのかしら」
心配になって、小屋を出てその周りをアーネストがいないか探しました。
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