辺りを見回していると、森に続くとてもとても小さな
小径
の入り口の側に、アーネストのハーネスにつけてあったリボンのような布が落ちていました。
きっと、ここからアーネストは森に入っていってしまったんだと思った沙羅は、おそるおそる、その
小径
に入りました。
入った直後は、きつめの坂になっていたので、アーネストが転んで落ちてしまったのだと思いました。
その沙羅の様子を、地主が連れてきた男の一人が見ていました。
男は、また違う男の所に行ってそのことを話しました。
「ゴードンの兄貴、あの
婆
さんの小屋にいたガキがなにやら森のほうに入っていきましたぜ」
そういうと、がっしりとした男はいやらしい笑みを浮かべて、やせぎすの、沙羅の事を告げ口した男に言いました。
「よおし、でかしたカール、おめえはヘイデル様にこのことを話して来るんだ。俺はそこの様子を見に行ってくるからよ」
一方その頃、沙羅は坂の一番下に降りていました。
でも、アーネストの姿はどこにもありません。
しかも、そこで道が二つに分かれていたのです。
私もアーネストのように鼻がきけばと思いましたが、沙羅には目がありました。
よく見ると、微かですが、アーネストの足跡が左の道のほうに付いているのを見つけました。
急いで、そちらの道を腰を低くしたままで駈けていきました。
小径
の小ささにどうするか、ぢぬしたちは話していました。
「ええい、こうなっては犬のように
這
っていくしかあるまい。おい、カール、お前が一番この中では身軽だろう。まず、お前が前を確認しながら行くんだ。その後にわしとゴードンが付いていく」
そういうと、カールの背中をこづきました。
やれやれというような顔をして、カールは仕方なく先頭になり、四つんばいになって
小径
に入っていきました。
ぢぬしたちが坂の一番下に来た頃には、沙羅は
小径
を抜けていました。
でも、やはりどこにもアーネストの姿はありません。
うっそうとした森の木々が沙羅を囲んでいました。
アーネストを探して沙羅が辺りを見ていると、はっとしました。
よく見ると、少し先の木々が動いて、いや、歩いているではありませんか。
しかも何かを話しながら。
耳を澄ますとその声が聞こえてきました。
「おおい、人間が入ってきたそうだぞ。我ら森の親衛隊は森の奥に人間を行かせないように移動して、迷わさなければいけないのだぞ。それが、エントの長老様の命令だ」
「そうかそうか、で、入ってきた人間とは?」
「何でも鉄砲を持った三人の雄ということだ」
では、急いで、他の物にも伝えよう」
沙羅は、自分の事を言われていたわけではなかったので、ほっとしました。
でも、今度は、大きな影が沙羅の目の前に立っていたので、びっくりしてきゃっと声を上げました。
こわごわ見てみるとヘラジカが目の前にいるではありませんか。
「おや、かわいい人間のお嬢さん。森に迷い込んでしまったのかい?」
ヘラジカが目の前にいるのにも驚きましたが、何より、人間の言葉を話している事にもっと驚きました。
沙羅は勇気を出して話しかけました。「
「ごめんなさい。森を騒がせてしまって。あの、私、沙羅と言います。大事な友達を捜しに来たんです。アーネストという子犬なんですけど、ご存じありませんか?」
そう聞くとヘラジカは脚を折ってしゃがみました。
「なんだい、アーネストの友達だったのかい。ああ、知っているよ。私の友達でもあるんだからね。沙羅ちゃん。私の名前はチャコと言うのよ。みんなはヘラジカのチャコおばさんって言ってるけど、まだまだ若いのよ。アーネストのいるところまで連れて行ってあげるわ。さあ、私の背中にお乗りなさいな」
ありがとうと一言言うと沙羅はヘラジカの背中に乗らせてもらいました。
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