5ページ目のお話し





 ヘラジカのチャコは、沙羅を落とさないよう、ゆっくりと歩いてくれていました。
沙羅は、動物や虫たちの話す声を聞きながら不思議な気持ちで楽しんでいました。

 ふと、沙羅が見た木々達は話をしていたのに、他の木々達が何も話さないのを不思議に思い、チャコに聞くと、それは、精霊にの宿った花々や木々しか話が出来ないのだと教えてくれました。
それから、動物たちの声を聞けるのは子供と、きれいな心を持った人間だけだとも教えてくれました。
また、いつも人間の言葉を話せるわけではなく、森の奥にいる、森の女神様が森に封印をして、外の世界と森との間に壁を作ってしまった時だけだとも教えてくれたのでした。

 話をしている内に、うっそうとした林を抜けて、ひらけたお花畑に出てきました。
色とりどりの花が咲き、色々な虫たちが食事をしたり、昼寝をしたりしていました。

 そのお花畑の奥のほうに、きれいなバラのそので囲まれた泉があり、ウサギやリスなどの小動物が集まっていました。
その中には探していたアーネストの姿もありました。

 沙羅は、アーネストと叫ぶと嬉しくなり、ヘラジカの背中に乗っている事も忘れてしまい、バランスを崩して背中から落ちてしまいました。

 アーネストは沙羅のほうに体を向けました。
「その声は沙羅だね。僕を捜しにきてくれたのか。ありがとう」
そう言うとしっぽを振って沙羅を迎えました。

 沙羅は、アーネストに会えた事にももちろん喜びましたが、それよりも言葉を使ってお話しが出来る事にもっと喜びました。
「良かったわ。無事でいてくれて」
差し出した沙羅の手をぺろっと嘗めてから、アーネストは複雑な顔をしていました。

 アーネストが言うには、前からここの動物たちとは仲良くしていたのだそうです。
そして、たまに来ては一緒に遊んでいたと言う事でした。
今、仲のいい友達とバラのうららの唄を聴いているのだと言いました。

 ふと、バラのほうを見ると、沢山の真っ赤なバラと白いバラの中に、一つだけ、色の違ったバラがありました。
花びらはつややかなショッキングローズピンクですが決して派手ではなく、むしろ落ち着いた感じの色でした。
ですので、派手なバラの中では一層際だって見えました。
そのバラが唄を唄っているのです。
とても、きれいで透き通った声で。

 しかし、突然唄が止み、周りにいる小動物達もざわざわと騒ぎ始めました。
その中の一匹が声を上げました。
「大変だあー。うららちゃんに、バラ食いむしがいるよおー」
唄を止めたバラのうららは泣き出してしまいました。
よく見るとバラの花びらに鉛色の芋虫が 這ってはって いるではありませんか。

 それを見た沙羅は、うららのほうに近づいていって、手でその芋虫をつまんで遠くに放り投げました。
芋虫は小さな小川に落ちて、小川に住む魚に食べられてしまいました。

 うららに再び笑顔が戻りました。
「ありがとう、人間のおじょうちゃま。本当に助かりました。おカァちゃまがいて下されば取ってくれるんですけど、最近来てはくれないの。一生懸命お歌を歌っているのに」
沙羅は、うららの歌をとても褒めてあげました。
そばにいたアーネストがそのうららのお母さんというのは森の女神の事だよと教えてくれました。

 沙羅はうなずくと、うららに自己紹介をしました。
「私はアーネストの友達で沙羅と言います。うららさんはとてもきれいだし、唄も素敵でした。そばにある、泉も素敵ですね」
そう言われると、うららの花は心を開いたかのように一層大きく咲きました。
「ありがとう、saraちゃま、そして、うららの森へようこそ。私も泉も褒めてくれて。この泉におカァちゃまがくるのよ。私は迎えるために唄を唄ったり、さいたりしてるの。おカァちゃまがくればお友達の動物ちゃまたちが喜んでくれるのですもの」
アーネストがそこに、僕はまだ会った事はないんだけどと付け加えました。

 沙羅はアーネストや他の動物たちと一緒にしばらくうららの唄を聴いていました。
どれだけか、時間が経って沙羅はアーネストにそろそろ家に帰りましょうと言いましたが、アーネストは首を振りました。
「だめなんだ。変な人間が森に入ったために、女神様が森に封印をかけてしまったんだ。それをとかないとこの森からはでられないんだよ」
そうは言った物の、アーネストは沙羅を何とかして、森から出してあげたいと思い、他の動物たちに聞いてまわりましたが、誰も首を振っています。

 ヘラジカのチャコが、それなら、もの知りのふくろうのトマスじいさんに聞いてみようといい、呼びに森の奥のほうへと歩いていきました。




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